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【退職金の財産分与】相手が払わない時は?(強制執行の注意点)

離婚後の退職金不払いと強制執行のイメージ

○退職金を受け取れないリスクがある

離婚時には、夫婦で話し合って財産分与の約束をすることが多いです。退職金も財産分与の対象になることがある(※)ので、将来退職したときに退職金を受け取る内容にして、財産分与の合意をすることがありますが、このように将来支払う内容にした場合には、相手が約束通りに支払ってくれないリスクがあります

離婚後に支払いを受ける場合、不払いに備えて公正証書を作ることが多いですが、将来の退職金を受け取る内容の合意をした場合、公正証書があっても強制執行が難しくなることがあります

そこで今回は、退職後に財産分与の支払いを受ける場合に、相手が不払いになってしまったときの対処方法をご紹介します。

 

※参考:

 

1.退職金を財産分与の対象にするケース

夫婦が離婚する場合には、夫婦が婚姻中に積み立ててきた夫婦共有財産について、財産分与することを定めることが多いです。

夫がサラリーマンなどである場合、離婚後の退職時に会社から退職金を受け取ることがありますが、退職金の支給が離婚時より後であっても、退職金を財産分与の対象にすることができることがあります。

退職金を財産分与の対象に含めることができるのは、退職金の支給時期が離婚時から比較的近かったり、退職金の支給の蓋然性が高かったりするケースなどです。

ただ、退職金を財産分与の対象にするとしても、離婚時には退職金の支給を受けていないので、退職金の財産分与の支払をすることができないことが多いです。実際、退職金の評価を退職時の金額を基準にして行う場合には、離婚時には退職金の金額自体が明らかにならないことも普通です。

このような場合、退職金を財産分与の対象にしても、支払時期については、離婚後の将来、退職をして実際に退職金が支給されたときと定めることになります。

ところが、このように将来の支払を約束する場合、実際に支払をしてくれるかどうかが不安になります。

特に、離婚後相当な年数が経過してから退職する予定である場合など、退職時に相手がどこでどのようにしているのかもわかりませんし、お互いが別々の生活をしていて、まったく音信不通になっている可能性が高いので、本当に支払いを受けられるかどうかが極めて怪しくなります。

そこで、離婚時には、離婚公正証書という離婚条件に関する合意書を作成して、相手から確実に支払いを受けられるように備えておくことが多いです。

次の項目では、離婚公正証書を作成する意味や効果についてご説明します。

 

2.公正証書に定めておく効果

離婚時には、離婚公正証書を作成することが多いですが、このことには具体的にどのような意味があるのか、以下で簡単にご説明します。

公正証書とは、公務員である公証人に作成してもらう公文書のことです。

離婚条件を定めた離婚合意書を公正証書の形にしたものを、離婚公正証書と言っています。

公正証書を作成する主な目的は、強制執行を容易にするためです。

通常、将来にわたって支払いを受ける約束をすると、本当にその支払いを続けてくれるのかが不安です。実際に、支払途中で不払いになってしまう人もたくさんいます。

公正証書がない場合、相手が不払いになったら、まずは相手に対して裁判を起こし、手続きをすすめて判決を得てから、その判決をもって相手の財産に強制執行する必要があります。強制執行とは、いわゆる差し押さえのことです。判決を持って相手の財産に強制執行をする場合、相手の預貯金や生命保険、不動産、株券、給料など、相手名義のどのような財産も対象にすることができます。

 

ところが、裁判をすることは、大変な手間になります。裁判所で複雑な手続きをしないといけませんし、期間も何ヶ月もかかってしまいます。このようなことが嫌になって、わざわざ裁判をしないで泣き寝入りしてしまうことも多いです。

 

ここで、離婚公正証書を作成しておくと、このような裁判の手間を省くことができます

公正証書には、「強制執行認諾条項」という条項をつけることができます。これは、公正証書に記載のある条項について、約束通りの支払をしない場合、当然に強制執行をされてもかまわないという条項です。

強制執行認諾条項がついていると、相手が不払いを起こした場合、わざわざ裁判をしなくても、いきなり公正証書を使って相手の財産に強制執行することができるのです。

離婚時には、離婚後に相手から支払いを受ける金銭がたくさん発生するものです。たとえば養育費や慰謝料、財産分与なども分割払いしてもらうことがあります。

退職金も将来支払ってもらう金銭の1種です。

このように、離婚後の金銭支払いの約束を定める場合、離婚時に公正証書を作成しておくと、将来相手が不払いを起こした場合に、裁判なしにいきなり相手の財産を差し押さえることができてメリットが大きいです。よって、世間では多くのケースにおいて、離婚時に離婚公正証書を作成しています

 

3.退職金を強制執行出来ない場合

離婚公正証書を作成すると、離婚後に相手が不払いを起こした場合にも裁判なしにいきなり強制執行ができるはずですが、退職金については、このことが当然にあてはまらないことがあって問題が起こります。

退職金は、離婚後相当程度期間が経過してから受け取ることが多く、離婚時には、具体的にいくらの退職金が支給されるのかがわからないことが多いです。よって、離婚公正証書には、退職金の財産分与額について、具体的な金額を書き入れることができません

結局、「退職時には、支給された退職金の2分の1を支払う」などと記載するしかなくなります。

ところが、このような記載方法の場合、公正証書があってもこれをもってすぐに強制執行をすることはできません。強制執行ができるためには、「具体的に債権額」が特定されている必要があるからです。

 

民事執行法22条では、

「強制執行は、次に掲げるもの(以下「債務名義」という。)により行う。

~金銭の一定の額の支払又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求について公証人が作成した公正証書で、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されているもの(以下「執行証書」という。)」

と定めています。

つまり、強制執行が認められるのは、公正証書の中でも、はっきりと「一定の額の支払」が確定しているものだけなのです。「退職金の2分の1」では、金額が特定されていないので、強制執行の対象にはなりません。

このように、離婚時に退職金を財産分与に含める場合、公正証書を作成しても、必ずしも強制執行ができないので、注意が必要です。

強制執行ができるようにするためには、「退職金のうち300万円を支払う」などと、具体的な金額を確定しておかなければなりません

 

4.金額が確定していない公正証書で強制執行する方法

4-1.条件成就執行文が必要

将来の退職金を財産分与の対象にするとき、具体的な金額を書き入れなければならないとしても、それは離婚時には確定していないのでなかなか難しいことがあります。

退職金見込み額より少なさそうな額なら、支払う側は納得しやすいですが、請求者側は納得しないでしょう。かといって、金額を上げていくと、支払う側は「そんなに受け取れるとは限らない」と言い出して、話がつかなくなってしまいます。

結局、両者の妥協点として、「退職時に、支給された退職金の2分の1の金額を支払う」などとしてしまうことでしょう。

 

このように、不確定な内容で公正証書を作成してしまった場合にも、必ずしも強制執行ができないというわけではありません。

この場合には、「条件成就執行文」という書類を取り寄せる必要があります。条件成就執行文をとることができれば、金額が不確定な公正証書によっても強制執行することができます

 

4-2.執行文とその種類

条件成就執行文のことを説明する前提として、執行文のことについて理解しておきましょう。

そもそも、どのような強制執行をする場合にも、執行文という書類を取り寄せる必要があります。執行文とは、強制執行をするための基本となる書類で、公正証書や判決などの債務名義を作成した機関に発行してもらいます。公正証書の場合には公証役場に執行文を発行してもらいますし、判決の場合には裁判所に発行してもらいます。

金額が確定している公正証書によって強制執行をする場合には、公証役場に「単純執行文」を発行してもらえば済みます。

単純執行文を付与してもらう場合には、特に難しい手続きは不要であり、公証人役場に申請をしたら、その公正証書が有効である限り、発行してもらえます。

これに対し、「退職金が支給された場合にその2分の1を支払う」などという条件がついている条項の場合には、単純に金額が特定できないので、単純執行文を発行することはできません。この場合には、「条件成就執行文」という種類の執行文を付与してもらう必要があります。条件成就執行文とは、公正証書の条項などに条件がついている場合、その条件が成就したことを証明した場合に発行してもらえる執行文です。この条件成就執行文がついていれば、もともとは金額が不確定であった公正証書によっても、相手の財産を差し押さえることができるのです。

 

4-3.条件成就執行文の取り寄せ方法

退職金の金額を特定しないで公正証書を作成したら、相手の財産を差し押さえるために条件成就執行文が必要ですので、以下では条件成就執行文の取り寄せ方を説明します。

公正証書に執行文をつけてほしい場合には、公証役場に対し、「執行文付与の申立」をします。このとき、単純執行文なら特に難しい手続きもなく、簡単に執行文をつけてくれます

しかし、条件成就執行文の場合には、申立人が、条件が成就したことを証明しなければなりません

退職金の財産分与を目的にする場合には、退職金が支給されたこととその金額を証明する必要があります

このとき、退職金の具体的な支給日支給金額を、明確な資料をもって証明しなければなりません。

 

4-4.条件成就執行文を取れない場合

条件成就執行文をとるためには、退職金の支給について具体的に証明する必要がありますが、実際にはこのようなことはかなり難しいです。

離婚後何年も経過していたら、相手がいつ退職したのかがわからないことが普通ですし、自分が知らない間に相手が退職していたということも多いです。

また、退職したらしいということまではわかっても、具体的な退職日や退職金の金額まではわからないことが普通です。離婚した元妻が、会社に問い合わせても、会社は説明してくれないでしょうし、退職金に関する資料も出してくれることはないでしょう。

このような問題があるので、条件成就執行文があれば差押ができるとは言っても、実際には困難になることが多いのです。

条件成就執行文の付与が受けられない場合には、結局裁判をして、判決を得る必要があります。公正証書をもって強制執行ができないとしても、公正証書自体は有効ですので、裁判の証拠にすることができます

裁判をしたら、裁判所から調査してもらうことによって、相手の退職金の支給日や支給時期を明らかにすることができるケースも多いです。

ただし、必ずしもすべてのケースで退職金の支払いを受けられるとは限らないので、注意が必要です。

このように、退職金の財産分与を受ける場合、退職時に退職金の2分の1を支払う、と定めていると、一見多くの金額を受け取れるようにも思えますが、実際にはまったく支払いを受けられなくなるリスクがあります。

退職金の財産分与を受ける場合には、将来の退職時に支払う約束をするよりも、金額は低くなっても、離婚時に早めに支払ってもらう方が結局は得になることがあるので、覚えておきましょう。

 

5.退職金の財産分与は弁護士に相談しよう

以上のように、離婚時の退職金の財産分与方法には、いろいろな問題があります。退職金の支払い方法について、退職金が実際に支給された場合にその2分の1の金額を支払うことにすると、一見受け取れる金額が上がって得になるように思えますが、実際には支払いを受けられなくなるリスクが高まり、損になることもあります。将来の退職金の財産分与を定める場合、公正証書があっても必ずしも強制執行ができないからです。

自分の場合にどのような退職金の財産分与方法が適切なのかについては、素人が自分で考えてもよくわからないことが多いです。離婚後どのくらいで退職が予定されているのかの他に、相手の勤務先、相手の性格なども考慮しながら検討する必要があります。

 

そこで、退職金の財産分与の問題は、離婚問題をたくさん取り扱っていて、この種の問題について適切に判断できる弁護士に相談することが役立ちます。

離婚と退職金の問題で悩んでいる場合には、是非とも一度、弁護士に相談してみましょう。

 

○まとめ

今回は、将来受け取る退職金を財産分与対象にする場合、相手が不払いになったときの対処方法を解説しました。

財産分与で将来の退職金支払を定めた場合、公正証書にしていても、強制執行ができないことが多いです。条件成就執行文をとろうとしても、条件の成就を証明することができず、執行文付与が受けられないことになりがちです。結局裁判をするしかなくなりますが、裁判をしても必ずしも退職金の財産分与が受けられるとは限りません。

退職金の財産分与を定める場合には、ケースに応じて、どのような方法を選択するかをしっかり見極める必要があります

自分でどのようにするのが最善かわからない場合が多いと思いますので、離婚問題に強い弁護士に相談をして、失敗しない財産分与請求をしましょう。

 

○離婚問題に強いエクレシア法律事務所にご相談を

上記のように、離婚時の退職金の扱いについて、3回の記事で扱ってきました。一つのテーマでこれだけ複雑なのですから、離婚問題でトラブルになりそうな火種があれば、弁護士に相談するというのも一つの選択肢です。なおのこと、こじれてしまった関係の場合は弁護士に相談する方がよいでしょう。

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